讃岐漆芸は、日用雑器を中心に発展し、江戸時代に玉楮象谷(たまかじ・ぞうこく)が中国やアジアの漆技法を深く研究し、独自の技法を草案してその基礎をつくりあげ、高松藩主・松平 家代々の手厚い工芸保護育成の奨励と支援によって、広く香川全域に多数の優れた漆芸家・漆業者を生み出してきました。近世以降、讃岐の漆はさらに発展し、摺り仕上げ、呂色仕上げ、塗立て仕上げを基本として、現在では、蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)、後藤(ごとう)塗、象谷(ぞうこく)塗の5技法が、日本の伝統工芸品に指定されていま す。その用途は幅広く、小物から家具・調度品に至る、生活のさまざまなシーンになじむ商品を生み出しています。


 摺り仕上げ
 木地の上に、漆を薄く何回も摺り重ね、木目を生かして仕上げる技法

 呂色(ろいろ)仕上げ
 漆を塗り重ねて、研ぎをした後、漆を摺り込みながら磨き上げる技法

 塗りたて仕上げ
 刷毛を使って、埃に注意しながら、何回か漆を塗ったまま仕上げる技法


伝統工芸品指定技法


 蒟醤(きんま)
 素地の上に漆を塗り重ね、蒟醤剣で文様を彫り込み、彫った溝に色漆を埋める技法

 存清(ぞんせい)
 漆を塗り重ねた上に色漆で文様を描き、輪郭や細部に線と点で彫りを施し、
 彫り口の凹部に金粉や金箔を埋めて絵柄を引き立てる伝統的な技法

 彫漆(ちょうしつ)
 色漆を幾層も塗り重ね、塗り重ねた層を彫ることによって文様を浮き彫りにする技法

 後藤(ごとう)塗
 漆を塗ってすぐに刷毛や指で表面を叩いて柄を出し、最後に透漆(すきうるし)を薄く塗って仕上げる技法

 象谷(ぞうこく)塗
 漆を数回刷り重ねた後に、さびや乾漆粉(かんしつふん)などで凹凸をつけて漆を刷り、
 真菰(まこも)の粉末をまいて仕上げる技法